
疾患
急性腎障害(AKI ; Acute Kidney Injury)
様々な原因によって急性(数時間から数日)に腎臓の機能が低下する疾患で、水分、電解質(ミネラル)、代謝産物(老廃物)を十分に体外へ排出できなくなります。
【症状】
腎臓の機能が低下することで体内に異常に蓄積してしまう有毒な物質を尿毒素と呼び、これによって尿毒症(元気・食欲の低下、嘔吐、痙攣、削痩、口臭など)や尿の増加・減少が引き起こされます。
【原因】
原因には、脱水、ショック、心臓病、麻酔、手術、外傷、火傷、熱中症、感染症(レプトスピラ、リューシュマニア、ライム病など)、炎症、自己免疫性疾患、アミロイドーシス、腫瘍、一部の薬剤(アムホテリシンB、アミノグリコシド、造影剤、白金化合物、ドキソルビシン、NSAIDs、ACEIなど)、中毒(ブドウ、ユリ、エチレングリコール、ビタミンD、ヘビ毒など)、尿石症などがあり、非常に多岐に渡ります。また原因が特定できない場合もあります。
そのため、これらの問題が出た際は必ずAKIの発生を考慮する必要がありますし、逆にAKIと診断された場合はこの中から原因を探さなければならず、全身の詳細な検査が必要となります。
【診断】
血液検査での急性のクレアチニンの上昇(48時間以内に基準値から0.3mg/dl以上の上昇)や尿量の低下を認めることで診断します。その程度や原因の疾患によっては的確な診断や治療を行っても死に至ることがあり、クレアチニンが高く、尿量が少ないほど死亡率が高くなります。
急性腎障害の診断ではその重症度以上に原因を診断することが重要で、問診(生活環境、薬物歴、毒物の暴露の有無、臨床経過など)、血液検査、尿検査、画像検査、生検などによって診断します。
【治療】
上記の原因となる疾患の治療に加えて、輸液療法による脱水の改善を行い、その他の症状に対する対症療法を行います。腎機能の著しい低下があれば腎代替療法(血液透析、腹膜透析)を検討しなければなりません。
AKIは原因が取り除かれ、水和状態、イオンバランス、栄養状態が整えられることによって治癒し、低下した腎臓の機能は数週間から数カ月かけてゆっくり回復していきます。
ただし、腎臓の機能が完全には戻らずに慢性腎臓病(CKD)に発展することも多く、その場合は継続的な検診や治療が必要となります。
