
疾患
慢性腎臓病(CKD ; Chronic Kidney Disease)
腎臓に慢性的な進行性の病変が存在し、そのために腎臓の機能が持続的に低下する疾患で、腎臓は不可逆性の機能不全に陥り、生涯にわたり治療が必要となります。
【症状】
腎臓の機能が低下することで体内に異常に蓄積してしまう有毒な物質を尿毒素と呼び、これによって尿毒症(元気・食欲の低下、嘔吐、痙攣、削痩、口臭など)や尿の増加・減少が引き起こされます。
また、腎臓の機能障害が進行すると、貧血、骨ミネラル代謝異常、高血圧、蛋白尿、代謝性アシドーシスなどの異常も生じます。腎不全というのはこのCKDが進行し、重度に腎臓の機能が低下した末期の状態を指す病名です。
【原因】
原因には、先天性・家族性疾患、脱水、ショック、心臓病、麻酔、手術、外傷、火傷、熱中症、感染症(レプトスピラ、リューシュマニア、ライム病など)、炎症、自己免疫性疾患、アミロイドーシス、腫瘍、一部の薬剤(アムホテリシンB、アミノグリコシド、造影剤、白金化合物、ドキソルビシン、NSAIDs、ACEIなど)、中毒(ブドウ、ユリ、エチレングリコール、ビタミンD、ヘビ毒など)、尿石症などがあり、非常に多岐に渡ります。
これらが治ったとしても、腎臓へのダメージが大きければCKDへと発展するので、これらの問題が出た際は必ずCKDの発症を考慮する必要があります。
【診断】
主に血液検査で3カ月以上に渡るクレアチニンの高値を認めることで診断します。
CKDはその重症度に応じてステージⅠ~Ⅳに分けられますが、クレアチニンで診断できるのはCKDのステージⅡ以降となります。近年ではステージⅠを診断するための方法が考案されてきており、いかにCKDをステージⅠの段階から診断し、治療を開始するかというのは動物の寿命を延ばす上でとても重要だと考えられます。
また、CKDはその重症度だけではなく、上記のような原因や異常によって治療法や予後が異なるため、問診(生活環境、薬物歴、毒物の暴露の有無、臨床経過など)、血液検査、尿検査、画像検査、生検などによる全身の検査が重要となります。
【治療】
上記の原因となる疾患の治療に加えて、CKDの重症度と症状に合わせて以下のような治療を行います。
治療は代表的なものだけ載せています。
・脱水:水分摂取を増やす、輸液療法
・骨ミネラル代謝異常:食事療法、リン吸着剤
・貧血:赤血球造血因子製剤、鉄製剤
・高血圧:RAAS阻害薬、カルシウム拮抗薬
・蛋白尿:食事療法、RAAS阻害薬、抗血小板薬
・食欲不振:消化管運動改善薬、食欲増進剤
・嘔吐:制吐剤
・代謝性アシドーシス:重炭酸製剤、クエン酸製剤
・その他:整腸剤、サプリメント
CKDは進行性の疾患で徐々に悪化していくので、それに合わせて治療も強化していく必要があります。
また、CKDの治療中に急速に悪化した場合は、治療が不十分であった、腎臓に悪影響のある食事や毒物を摂取してしまった、別の病気を発症してしまった、といった可能性を考えなければなりません。
